eKYCサービス導入について

システム開発部の渡辺です。主に顧客システムを担当しており、日々証券口座開設画面や口座開設業務の改善対応を行っています。 今回は2020年10月末にサービスインしました、eKYCサービスについてご紹介いたします。

1.eKYCとは?

electronic Know Your Customerの略語です。
KYCとは銀行口座や仮想通貨口座を開設するとき等に必要となる、ご本人確認手続きの一環であり、eKYCはオンラインで行うことを指します。
当社の証券口座開設では、スマートフォンを利用し、ご自身の「容貌、本人確認書類(個人番号確認書類含む)」をWEBブラウザ上で撮影することで、ご本人確認の手続きを行います。

2.導入の背景

2018年11月に「オンラインで完結する自然人の本人特定事項の確認方法の追加」が公表され、 金融機関の口座開設などのご本人確認において、郵送の手続きなしで口座開設が可能になりました。 郵送手続きが不要となることより、お客さまへ口座番号を通知するまでの期間短縮や郵送料の削減に繋がり、より一層顧客利便性、サービス向上、業務運用改善が見込まれるため、導入をするに至りました。

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eKYCサービス導入後の証券口座開設申込フロー及び、業務運用フロー

3.導入の効果

3-1.お客さま目線
①本人確認書類の画像ファイルを予め準備する必要がない
当社証券口座開設で本人確認書類を提出する場合、従来は予め準備した画像をアップロードする必要がありました。 eKYCサービスの導入により、申込フォーム内で本人確認書類の撮影ができるため、別途専用アプリのダウンロードをするなどの煩わしさもなく、利便性が向上しました。

②口座開設完了が最短1日に改善された
当社証券口座のお申込みから、口座番号がお客さまへ通知されるまでの期間が短縮されたため、従来よりお取引開始までの期間が短縮されました。

3-2.当社目線
①本人確認業務負荷が軽減された
今まで書面と画面の両方を見比べてお客さま情報が一致するかの確認をしていましたが、 「お客さまの申込情報」と「OCR技術で読取った本人確認書類の券面情報」を専用画面に表示することで、画面1つでの確認が可能となり、業務負荷が軽減されました。

②口座番号通知の郵送料が削減された
eKYCを利用しない証券口座開設は、郵送受取をもってご本人確認完了としているため、年間で一定量の郵送料がかかっています。 eKYCサービスでは電子上でご本人確認が完結するため、メールでの通知が可能となり、郵送量の削減に繋がっています。

③サーバ維持料の低減、高負荷時は自動的に拡張される
eKYCサービスはオンプレミスではなく、クラウド(当社はAWSを採用)を利用しています。 そのため、専用サーバ調達が不要であり、サーバの初期費用が掛かりませんでした。
また、高負荷時に自動的にサーバ拡張されるため、時期や時間帯によって証券口座開設申込数が増加した場合でも耐えられる仕様となっています。

4.今後改善が必要なこと

本人確認書類の撮影時に稼動している、OCR読取精度です。 文字によって読取づらかったり、撮影品質(反射している、ぼやけているなど)によっても、読取精度は左右されます。 読取精度が向上するとご本人確認業務の手間が省けるため、よりお客さまへの口座番号通知までの期間を短縮することが見込まれます。 読取精度の機能向上は現在も定期的に実施中です。

5.苦労・工夫したこと

eKYCサービスの導入で苦労したことは「現業務運用フロー、システムフローが整理されていなかったこと」です。
業務部門内には操作マニュアルは存在していますが、業務運用フローやシステムフローは存在していませんでした。 そのため、新業務運用を検討する前に現業務運用フロー、システムフローの整理が必要でした。 業務内容を全く把握していない状態からのスタートで、私一人の力では対応しきれない状況でしたため、まずは情報収集から取り組むことにしました。 システム部内で運用業務を把握している方から情報共有頂いたり、業務部門と取引のある外部委託会社の担当者へヒアリングや資料提供を依頼し、 大まかな現業務フロー、システムフローを自身で作成しました。 その後、業務部門と打ち合わせを重ね、複数回の書き直しを経て、完成までに至りました。 現・新業務運用フローを作成する際、特に気を付けたことは下記です。

①1つの業務を詳細化して、具体的に何を行っているのかを業務フローに記載した
具体的に確認することで、新業務運用を追加することによる、現業務運用への影響を確認することができました。 なにより、業務運用の理解にも繋がり、業務部門との会話がしやすくもなりました。

②業務を行っている実担当者にヒアリングする
実担当者にヒアリングを行うことで、現業務運用の新たな課題点や新業務運用を追加する場合に留意すべき点など、新たな発見がありました。

両部門で協力し合えたことにより、サービスイン後に大きな混乱は生まれませんでした。

6.まとめ

今回のeKYCサービスの導入で、お客さまの利便性の向上、当社内の業務運用の改善に繋がったことを実感できました。今回は新規のお客さまに向けた改善であったため、既に当社サービスを利用されているお客さまへのサービス改善を行いたいです。
また、証券口座開設申込は当社サービスの入り口になるため、お客さまに他ネット証券会社の中から当社を選んで頂ける様、更なるサービス向上を目指していきたいです。