国内証券唯一となるRESTful APIの公開背景

2020年8月20日に kabuステーション APIを公開させていただきました。 実は、この構想は1年以上前からあったのですが、紆余曲折しながらようやく公開までこぎつけることができました。 今回は、なぜこのタイミングで個人向けの公開なのか?という点に関して語っていきたいと思います。

対象は「ITリテラシが高く」かつ「金融リテラシが高い」顧客層。ということで、相当ニッチな層に向けたソリューション公開ということもあり、 そもそもで、そんなニッチなソリューションが必要なのか?収益見込みはあるのか?等、容易に想像が付く意見を社内でも頂戴してきました。 そのような中、後述しますが、当該ソリューションの提供により、少しでも機関投資家と個人投資家の差を埋めていきたい!という想いから、何とかプロジェクトを立ち上げ、リリースまでたどり着くことができました。

kabuステーション API |株のことならネット証券会社【auカブコム証券】
GitHub - kabucom/kabusapi: kabuステーションAPI ポータル

背景 ~ デジタルネイティブ世代の投資参入

  • コロナショック以降の相場で口座開設数は大幅増加
      ~特にデジタルネイティブ世代の20代~30代の新規口座開設が過半数を占める

    -コロナ相場における新規口座開設セグメントの変容
     コロナ渦を境にデジタルネイティブ世代の口座開設数が増加傾向に。ITリテラシが比較的高めな顧客層として注目。
    ~年代別新規口座開設状況推移~
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    年代別新規口座開設状況

背景 ~ プログラミング人口の増加

Github(世界最大のソフトウェア開発プラットフォーム)のユーザー数は4000万ユーザーを超える
 (その内、2018年10月~2019年9月の1年間での新規登録が1千万ユーザーと高いモメンタム)
   国内のプログラミング教育関連市場は2025年までに倍増・230億円規模との予測も

■Githubの登録ユーザー数は4400万名にのぼる
・新規プロジェクトを公開したユーザーは1年間で44%の伸び

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Github公表レポート

■国内でもIT人材の育成ニーズの高まりを踏まえ、プログラミング教育の市場予測規模は急拡大が続く

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シードプランニング社調査「プログラミング教育関連市場の現状と将来展望」

背景~国策としてのIT人材創出の流れ

経済産業省予測によればプログラミングスキルをもつIT人材は2030年までに113万人まで増加 高度IT人材の裾野を拡大するにあたり、文科省は新学習指導要領にてプログラミング教育を必修化 開発スキル×金融リテラシーを併せ持つ個人の資産形成チャネルとして、安定した金融インフラに
  自由度の高い開発・取引環境を提供することが2020年代のオンライン証券には求められる

■ユーザの行動変容

デバイス変遷として、「デスクトップPC」から「スマホ」に遷移。
個人投資家としての行動変容としても、多様化するアプリの中から「既存アプリケーションの利用」から「自分にあったアプリケーションの検索と利用」に遷移している。 そういった中で、上述してきた背景もあいまって、個人投資家としては、「自分にあったツールやアプリケーションを自分で構築し、利用する時代」へ推移すると考えています。 プログラミングが教育としても追加され、10年後にはプログラミングは特殊な技術ではなくなってきます。 自らのアイデアや投資理論をプログラミングに置き換え、資産運用に役立てていく。数年後には日常風景になっている可能性も十分あるとも。 であれば、証券会社として、金融サービスのフレームワーカーとしてなすべきことは、個人が自由に資産運用を手がけることができるソリューションを提供していくことだとも考えました。 デジタルネイティブ層の拡大傾向、プログラミングスキルを身につけるユーザ層の拡大という背景をもとに、 まさに個人向けのAPI解放タイミングとしては
「いまでしょ!」 と考えたわけです。

kabuステーションAPIでのこだわり

■RESTfulなAPIに拘る

やはり、特定の言語に依存してしまうと、門戸を狭めてしまうこともあり、「RESTfulなAPI」には拘りました。 任意の開発言語を用いて、データ取得や注文執行を行っていただけることではじめて自由度の高い資産管理、資産運用が実現できると考えたためです。 昨今はAIを容易に扱えるライブラリも増えてきました。
AIを活用した独自アルゴリズムを用いたポートフォリオ管理や、複数のテクニカルを組み合わせた独自の取引手法を行ったりすることも可能になると考えています。

■Github上でのコミュニティの形成に拘る

多くのエンジニアはGithubを利用しています。
私たちとしては、エンジニアがよく利用されているコミュニティ基盤を活用し、サンプルを含めたコンテンツをオープンソースとして公開することを決めました。
まだまだ途上感は否めませんが、今後もサンプルや機能の拡張をコミュニティからの要望や意見を通じて実施して意向と考えています。
現在はAPIの利用方法にとどまっているサンプルプログラムですが、テクニカルやAIを用いたアルゴリズムのサンプルの提供も将来的に実施できればと。

コミュニティについては、インターフェースの要望ヒアリングや、拡張機能のヒアリングも積極的に行ってくことも想定しております。
「利用できる銘柄をもう少し多く!」「kabuステを介さないで直接API叩きたい!」「条件注文も出したい!」...等多数のご要望を。
頂いた要望、お声はきちんと検討し、少しでも利用しやすいよう改善を継続していく所存です!
これまでは一方的に金融会社が提供する機能やツールを利用してきたかと思いますが、これからは必要な機能やインターフェースは金融会社とユーザが一緒になって生み出していく時代になるとも考えています。
是非、忌憚なきご意見をいただければという思いであると同時に、共に自由度の高い資産管理基盤を作り上げていければ幸甚です。

最後に

「すべてのひとに資産形成を」の合言葉を社会的使命とする当社として、今回のkabuステーションAPIという形で一般公開させていただきました。
一人でも多くの方にデジタルの武器を手にして頂き、資産形成のご助力となれば幸いです。

editor:Nakazawa